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想いを重ねる夜17

Auteur: 相沢蒼依
last update Date de publication: 2026-01-28 10:55:24

***

穂高さんの作ってくれた朝ごはんを揃って食べてから、お父さんをフェリー乗り場まで見送るために家を出た。見送ると言った矢先に「そんなのいらん!」と怒りを露にしながら、頑なに抵抗する言葉を発したお父さんを見て、穂高さんはカラカラ笑いだす。

「千秋と同じように、強がることを言っているお父さんを見ていると、思わず愛着がわいてしまいます」

なんてサラリと口にしたお蔭で、お父さんは心底嫌そうな表情を浮かべて、むっつり黙り込んでしまった。

これにより口の達者な元ホストには、親子そろって勝てそうにないことが、嫌というほどわかった。

「穂高さんってば、怖いもの知らずというか、本当にすごいと思う」

内なる苛立ちを表すように、靴音を立てて前を歩くお父さんを、チラッと見てから指摘すると、形のいい眉をあげる。それは、何を言ってるんだといった顔だった。

「どこら辺が、怖いものになるんだろうか?」

「俺のお父さんが怖くないの?」

「仲良くなりたいと思っているが、怖さはないかな。千秋は俺の父を怖いと思うかい?」

「思いません……」

ふと投げかけられた問いかけに、間髪入れずに答える。

「それと同じとい
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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―純血の絆―③ヴァンパイアとしての愛し方3

    「なんていうか……。穂高さんが傍にいてくれるだけで、つらいのがなくなる気がします」 視線を逸らしながら、思っていたことを口にする。下半身の事情で焦っているせいか、さっきまでつらかった吸血衝動が、多少なりとも緩和されていた。「千秋は我慢強いね。俺も見習わなくてはいけないな」 カーテンの隙間から入り込む僅かな月明かりが、穂高さんを照らした。俺の顔をじっと見つめながら、印象的な瞳を意味深に細める表情を目の当たりにして、胸がきゅっとしなる。 それと同時に、栗色の髪も月明かりの加減で金髪に見えるせいで、ヴァンパイアの姿をした彼に激しく抱かれたことを思い出してしまった。「穂高さん……」 妙に掠れた自分の声が、部屋の中に響く。どことなく誘っているようなそれを聞いた途端に、目の前にある形のいい口角の端が上がった。 意味ありげな穂高さんの微笑に、何度も目を瞬かせるしかない。こんなふうに微笑まれる意味が、さっぱり思いつかないからだった。「なぁ千秋、布団の上から抱きしめた時点で君が勃っていることに、ちゃっかり気がついていたんだが――」「えっ!?」「素知らぬふりして、そのままやり過ごせるほど、できた男じゃないんでね」 穂高さんの言葉に驚いて、布団を握りしめていた力が呆気なく抜けてしまった。見ていてそれが分かったのか、次の瞬間には勢いよく布団が剥ぎ取られてしまう。 外気にさらされた躰は、ぬくもりが瞬く間に消え去り、厚手のパジャマを着ていても背筋がぞくっとした。ヴァンパイアの状態でいるときは体温が低いので、寒さが余計に堪える。「君の体温をできるだけ奪わないように、あたためてあげる。こうして――」 手にした布団を自分に背中に被せるなり、俺に跨ってきた穂高さん。そのままゆっくりと包み込むように、躰の上に倒れてきた。「あったかい……」 冷えた躰に、穂高さんの体温がとても心地よかった。俺の頬にオデコをすりりと擦りつけてから、首筋にキスを落とす。「千秋がヴァンパイアだというのに、君の香りを嗅ぐだけで、いつものように吸血したくなる」「えっ?」 いつも俺を吸血するときに噛む場所に、穂高さんの牙の側面が当たって、彼が変身したことが分かった。

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―純血の絆―③ヴァンパイアとしての愛し方2

    「君の血が欲しくて来たんじゃない。吸血衝動のつらさを知っているから、少しでも楽になればと思ってね」 まったく触れていないというのに、俺の目を惹きつけずにはいられない穂高さんの姿を見ただけで、下半身のカタチが変わってしまったということが、ものすごく恥ずかしい。 彼はひとえに俺を想って、遠い場所からこうして、わざわざ来てくれたというのに――。 それを知られないようにすべく、両腕で布団を引っ張った。妙な振動を与えないために、躰を緊張させて強張らせる。「千秋、相当つらそうだね。呼吸もかなり荒くなってる」「ええっ、えっと布団の中にずっと引きこもっていたから、酸素が足りなくなっているのかもしれないです。……多分」 首から下は完全に布団の中に入ってる。穂高さんに布団を剥ぎ取られなければ、俺が勃っていることは知られない。「ヴァンパイアの姿でいるのは、寒くないかい? 俺が布団の中に入って、抱きしめながら温めてあげよう」 布団の上から抱きしめていた俺の躰を放し、立ち上がって両目を閉じた穂高さんは、次の瞬間には人間の姿に代わっていた。「だだだ、大丈夫ですよ。しばらく布団の中に入っていたので、そこまで寒くはありません。本当に!」「俺はもともと体温の低い男だから、もしかしたら千秋の熱を奪ってしまうかもしれないね。それが分かっているから、そんなことを言って断っているんだろう?」 眉間に皺を寄せた顔を近づけて、「他にできることがあるだろうか」なんて言われたら、断ることなんてできやしない。

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―純血の絆―③ヴァンパイアとしての愛し方

    「うっ、穂高さんはっ……すごい、な」 満月が出る夜の前後に、吸血衝動が出やすいことが分かってから、バイトのシフトを昼間に変更したり休んだり、自分なりに工夫してやり過ごしていた。 喉の奥が干上がる何とも言えないその感じは、いく度味わってもつらいと思わされた。俺に出逢う前にこの吸血衝動を、穂高さんは必死になって抑えていたというんだから、本当に頭が下がる。 脳内に描かれる深紅の液体、煌めく赤い色の血液――それが、どんな味をしているのか。頭の中であれこれ想像するだけで涎が滴るのに、それが喉を通っても上っ面を通過するだけで、余計に干上がっていく感覚を覚える。 ぎゅっと目を閉じて、頭の上から布団をかぶって吸血衝動が治まるのを待っていたら、背中にずっしりとした重さをいきなり感じた。「千秋、随分とつらそうだね。大丈夫かい?」 それは布団の外から聞こえた、くぐもった声だった。だけど聞き覚えのあるその声を聞いた瞬間に布地を引っ張って、何とか頭だけを出した。「穂高さん、どうして……」「合鍵を使って部屋に入った。俺は昨日の夜に、吸血衝動があってね。千秋の頑張りを真似して、やり過ごしてみたんだ。だけど――」 背後から回されている穂高さんの両腕の力が、痛いくらいにきつくなる。「暗闇の中でも光り輝く赤い瞳を見ただけで、君に魅せられてしまう」 俺の姿に当てられたのか、穂高さんも髪の色が金髪になるのと同時に、両目の色が赤くなった。「駄目だよ、穂高さん。今の俺は吸血鬼なんだから」 穂高さんが欲する血を与える存在に、俺はなれないというのに。求めるように見つめられるだけで、俺自身が大きくなってしまった。

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―    荷物の行方――(竜馬目線)

    「竜馬くん、悪いんだけど受け持ちの集荷が終わったら、そのまま国道を上って、通りに面してるコンビニ3店舗の荷物の集荷、頼めないかな?」 帽子を被り直して会社を出ようとする俺の背中にかけられた声に、首を傾げながら振り返ってあげた。声の主は、電話受付のパートのおばさん。集荷を終えて会社に戻ってきたらいつも笑顔で出迎えてくれる上に、お菓子を戴いたりと結構お世話になっている人なんだ。「国道沿いのコンビニ?」 言いながらおばさんのデスクに赴くと、ここなんだけどと説明するのに地図を見せてくれる。どこだろうとしっかり確認してみたら、以前働いていたコンビニも指定されたものの中に入っていた。「竜馬、無理ならいいんだぜ。俺が行くし」 直属の上司小林さんが、気さくに声をかけてくれる。この人に面接をされてどうして大学を辞めたのかと訊ねられたとき、人間関係のいざこざがあり、疲れきって辞めたのだと説明してあった。 そういういきさつがあるので、わざわざ気を遣ってくれているんだろうな。「大丈夫ですよ。今日はいつもより集荷の数が少ないし、コンビニ3店舗回るだけなんで、あっという間でしょう」「助かるわ、ヨロシクね」 おばさんがコッソリ、俺の手に何かを握らせてくれた。薄くて細長いモノは、間違いなく板ガムだろうな。「ありがとな、いってらっしゃい竜馬」 こうして爽やかに見送られ元気に会社を出発し、受け持ちの集荷を終わらせて、国道に面したコンビニをハシゴした。一番最後の集荷は、バイトしていたコンビニだった。 スムーズに駐車場に停車して、トラックから降りる。外から店の中を覗いてみたら、見知らぬ人がレジに立っていた。「……昼間は大学があるから顔を合わせるハズがないって、頭で分かっているのにな。変に期待した俺って、やっぱりバカだ――」 逢わせる顔がないのに、逢いたいと願ってしまう。こんな事を考えるだけでも、ダメだというのに。 奥歯をぎゅっと噛みしめて被っていた帽子を目深に被り直してから、コンビ二のドアを開けた。「いらっしゃいませ!」 元気な店員の声に、しっかりと頭を下げる。「お疲れ様です。白猫運輸ですが、集荷に来ました!」 店内のお客様の邪魔にならないレジの端っこに向かい、集荷する荷物を無事に受け取った。さっきのコンビニよりも数が少ないので、そのまま両手で持ち帰れそうだ。「一

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   渡せないバレンタイン

    1月も中旬が過ぎると、あちこちのお店のディスプレィがバレンタイン仕様に変わる。勿論、働いているコンビニも同じく、レジ前の棚にお客さまの目を惹くように、バレンタイン用のチョコを配置していった。「どうか売れ残りませんようにっと。時期が過ぎて残った物が、安値で叩き売りされてる姿は、あまり見たくないからね」 置いてきぼりにされた、俺のようになってほしくはないから――。 結局クリスマスもバレンタインも、一緒にいられなかった俺たち……。その前に、別れてしまった。 俺の心をまるごと包み込むような優しいウソをついて、泣きながら去って行った大きな背中が、今でも目に浮かんでしまう。 キレイにラッピングされた箱をひとつひとつ丁寧に並べながら、別れるちょっと前に一緒に食べた美味しいチョコのことを、つい思い出してしまった。 コーヒーが飲めない俺のために、わざわざ甘いカフェオレを作ってくれたよね。たったそれだけのことなのに、すっごく嬉しかった。 ――俺だけの特別って。 他にもホストの仕事が忙しくて逢えなかった分、傍にいたいっていうワガママを口に出せずに、ぐっと飲み込んでガマンした俺を見つめた穂高さんの眼差しにぐっときたんだ。『……そんな顔しないで。すぐに傍に行くよ千秋』 俺の顔色ひとつで見事に心情を読み取り、包み込むような笑顔をくれたっけ。 そんな過去の出来事を思い出しながら棚にすべての商品を詰め終えて、不備がないか最終チェックをしっかりした後にレジに戻った。 あの日食べたホワイトチョコの味、まだしっかりと覚えてますよ穂高さん。 胸の奥深くで静かに燃えている残り火を感じながら、貴方を想う。いつか叶うことができるのなら、一緒に過ごしたい。だから俺は頑張ります。 ――穂高さんを追いかけるために――

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   ―純血の絆―②その11

    銀髪を枕の上に散らしたまま縋るような眼差しで見つめられるだけでも、かなりヤバい――深紅色の瞳がルビーのように煌くせいで、煽られた気分になる。「穂高さん、俺ね……」 ギシッというベッドの軋む音が耳に聞こえてきた。千秋に背を向けているので何をしているのか分からないが、多分起き上がったのだろう。聞こえてくる声の雰囲気でそれが伝わってくる。「お父さんから話を聞いている最中に思ったのが、貴方と同じ立場になりたいって考えたんだ」「同じ立場?」「うん。穂高さんが抱える悩みを知りたかったし、力になりたいと思った。それと一緒に、人間である自分が嫌になったんだ。人よりも長く生きられる穂高さんの命を奪ってしまうことが、すっごく嫌だなって」 千秋……そんな風に思って、俺の血を飲んだというのか――。「ただ血を与える存在だけじゃない。半分だけでもいいから同じ種族になって、穂高さんのつらさを分かち合いたかった。貴方を愛しているから」「俺は千秋の苦しむ姿を見たくない! それなのにっ」 悲鳴に近い声で怒鳴りながら振り返った。ベッドの上にいる千秋は一糸まとわぬ姿になっていて、静かに俺を見上げた。 そのあまりの美しさは、おとぎ話に出てくる妖精のようだと瞬間的に思った。生命力の溢れる人間の姿とは一転した、儚げなヴァンパイアの様相――肌の色が白く見えるのは、深紅の瞳の赤が輝いているから。 千秋から漂ってくる妖気に当てられて、勝手にヴァンパイアの姿になってしまった。「穂高さんが傍いれば、俺はどんなにつらいことでも乗り越えられる。絶対に人の血を飲まずに、吸血衝動をやり過ごしてみせるよ」 にっこりとほほ笑みながら、俺に向かって両腕を差し出してきた。「貴方の愛さえあれば生きていける。お願い、穂高さん」「駄目だ……。ヴァンパイア同士の性行為はどうなるか分からない。互いの唾液に含まれる催淫剤が混ざり合ったりしたら、それに溺れて抜け出せなくなるかもしれない」「大丈夫だよ。だって俺は、完全な吸血鬼じゃないから」 千秋の告げた言葉が、渋る俺の意識を揺り動かす。足が勝手に動き出し、自分に向かって伸ばされている手を取ってしまった。その手を千秋が握りしめた瞬間、すごい力で引っ張られた揚げ句にベッドの上に仰向けにされた。「穂高さん俺ね、もうひとつ思ったことがあったんだ」 素早く俺に跨り、深紅

  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   Final Stage 第2章:必要のない思い遣り2

    ***「憂鬱だけど、行かなきゃな……」 島で買った名産を手にして、楽しく過ごしたことを語りながら、お土産を配るハズだった。本来なら――。(うだうだ考えていても仕方ない、なるようになるって!) ばしばしっと両頬を叩いて気合を入れてから、アパートを飛び出す。いつもより少しだけ遅い出発時刻。バイト先にいる竜馬くんのことを考えると、どうしても気持ちが落ち着かなかった。 ここで、一番の問題にぶち当たる。それは普通に、会話をはじめることだ――告白された身として、やんわりと断った事実があるからこそ、ムダに気を遣いまくってしまう。 困ったなと思いつつ従業員入口の扉を開けると、目の前に見慣れた背中

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  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   過去への灯火

    「……うっ、いたっ!」 きりきり痛む頭を押さえて、横たわっていた場所からゆっくりと身体を起こしてみた。 しっかりと目を見開きながら周りを見渡してみたのだが、そこは真っ暗闇で何も見えない様子がまるで、さっき沈んでしまった海の底のようだった。(――もしかしてここは、死後の世界なんだろうか) 痛みを伴う頭はそのままに、自分の身体のあちこちを触ってみたけど、生きているときの感触と何ら変わりない状態に、首を傾げるしかない。 恐々とその場から立ち上がって周囲にしっかりと目を凝らしてみたら、光り輝いている丸いものを見つけることができた。 両足を踏みしめて足元が大丈夫なことを確認しつつ、その丸い

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-26
  • 残り火 After Stage ―未来への灯火―   Final Stage 第7章:愛をするということ2

    ***(話し合わなければいけないと思ったのに半年以上の間、何をやっていたんだ俺は……) 農協の内定が決まってからといって生活が一変するワケじゃなかったけど、夏休みや冬休みを利用して島に赴き、バイトと称して職場で仕事をさせてもらったりした。 それ以外の時間があったというのに、穂高さんと顔を突き合わせると、ムダにイチャイチャばかりしちゃって大事な話をせずに、互いの近況報告みたいなものだけで終わってしまい、あっという間に時が過ぎ去ってしまった。 そして年が明けて3月になり、島にある穂高さんの家に荷物を送ってアパートを引き払った。その足で実家に向かうべく、穂高さんの車に付いてるナビに住所を打

    last updateDernière mise à jour : 2026-03-25
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    「そういうワケですので、暫くお休みをいただくことになります。大変、申し訳ございません。お気遣いありがとうございます」 電話の相手――船長にしっかりとお礼を告げる。『いいだ、いいだ! 普段から離れて暮らしてんだからよ。たまぁには、おとーと孝行せにゃならんって。だからっておめぇ、はっちゃきこいて頑張るんじゃねぇぞ。ぜってぇ失敗するからよ!』 ガハハという豪快な大笑いの後、勝手に電話が切られてしまった。 お蔭で暗く沈んでいた気持ちが、ちょっとだけ浮上する。明るく接してくれた船長の機転に、感謝しなければならないな。 自然と上がった口角の端をそのままにテーブルにスマホを置き、ベッドで横になっ

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